ムラの格

泉州の方で調査をしていると、「ムラの格」とゆうのがあっておとろしい。「あのムラは下」、「あのムラから嫁もーたらよーない」とかとゆうのがある。もちろん、そのムラは被差別部落ではなくて、一般のムラである。
一般のムラに、格の上のムラと、格の下のムラがあって、さらにその下に被差別部落がある。もちろん、そのムラの中には家の格があって、一方、宮座とかの年齢集団では、家の格は一切無視で、純粋に年齢で決まるきわめて平等な仕組みが何の矛盾もきたさずに併存している。
某神社の調査の時にも、世襲の宮座の一員で、庄屋の子孫の家があって、祭礼ではあきらかにほかの人たちより一段も二段も上の立場にある人がいた。その人が日常でも特権的立場にあるか、というとそうでもない。ムラとして祭礼の日役に出る時は、祭礼における立場からすれば、一段下がった人の指図に従って一般の人たちと平等に賦役に当たっている。当人はそれに対して何の疑問も持っていない。
こういう状況をはじめて見たのが、某市史の調査のときで、去年までムラの役をしていて、祭りの時に座敷にすわって大きな顔をしていた人が、今年はムラの日役、ということで座敷にすわっている人たちのために、「いやー。ことしはムラの日役にあたってなー。」といいながら、片道30分以上ある山道を弁当を運んだり、酒を運んだりして普通に下働きをしているのを見たときである。
もちろん、ここでは宮座の一員としての立場と、ムラの一員としての立場という2つの立場が、同じ祭礼なかで出ているだけといえばそれまでなのだが、たとえば、会社や学校で、役員をしている人や、先生が、平社員と一緒に、格下の者の指図を受けながら仕事をする場面というのはプライベートも含めて考えにくいのではないか。こういう、世襲や、年齢で格差が厳然としてありながら、村人という立場になったときには格差が完全に解消されて全く対等になる、というシステムというのはものすごくうまいことできとると感心してしまうよ。
それにしても、泉州のムラの格ゆうのは何やろうな。