私は坂の商店街を歩いている。商店街の雰囲気は大阪の下町。横に人がいる。その人は内田百間である。百間先生は、「ここは神楽坂」だという。横に大時代な喫茶店がある。この喫茶店は「ザカ」であると思う。
百間先生は、学生達*1は遅刻しそうになるとこの脇道を通るのです、と言う。確かに、坂の商店街から右の方に伸びる細い脇道がある。私はその脇道を通ることにした。
脇道は細く、崖を削り取ったような道で、左手の下の方は用水路でその向こうに田んぼが広がっている。右手は崖がせり上がっており、上は茂みがせりだしている。茂みがじゃまなので立って歩けない。四つんばいになりながら、用水路におちないようにそろそろと進んでいく。
道の先に、立派な近世の墓が見える、と思ったら村の中に出た。墓があって、向こうに立派な家がある。そのまわりは畑になっている。どうもどこかの家の敷地に出てしまったらしい。
(続く)

*1:百間先生は法政大学のドイツ語の教授である。