「関関同立」1人で「73人分」合格…大阪学芸高

 ◆センター試験単独入試、学校が大量出願

 大阪市住吉区の私立大阪学芸高校(近藤永校長)が2006年度の大学入試の際、成績が優秀だった1人の男子生徒に働きかけて志望と関係のない学部・学科を多数受験させ、合格実績を事実上水増ししていたことがわかった。生徒は「関関同立」と呼ばれる関西の有名4私立大の延べ計73学部・学科に出願し、すべて合格。受験料計約130万円は同校が全額負担していた。大学入試センター試験の結果だけを利用して合否を判定する入試制度を使って大量に出願し、合格発表後、生徒側に激励金名目で5万円と、数万円相当の腕時計を贈っていた。文部科学省は事実関係を調査する方針。

 関係者の話や同校の説明によると、同校は5年前、進学奨学金規定を設けた。「関関同立」(関西大、関西学院大同志社大立命館大)と、「産近甲龍」(京都産業大近畿大、甲南大、龍谷大)の計8私立大を受験する生徒の受験料を負担する制度で、入試結果が良かった生徒に激励金を贈ることも定めている。

 規定は非公開で一部生徒だけに告げられる。73学部・学科に合格した生徒のケースでは、センター試験直前の昨年1月、担当者が説明。生徒は国公立大が第一志望だったが、関関同立の計5学部・学科の一般入試の受験も希望した。

 その際、担当者は「学校の判断で関関同立のほかの学部・学科にも出願していいか」と持ちかけた。生徒が拒否しなかったため、学校側はさらに延べ計68学部・学科に出願手続きをした。生徒は理系志望だったが、出願先には文系の学部・学科も含まれていた。いずれもセンター試験の結果だけで合否が決まるもので、生徒は新たな受験の必要はなかった。

 結果的にすべて合格となり、同校は生徒を表彰、数万円相当の腕時計を贈り、5万円を生徒の保護者名義の口座に送金した。生徒は結局、第一志望の国公立大に合格し、進学した。

 06年度、同校は「関関同立」の合格者数を144人と公表しているが、これは延べ人数で、半数以上はこの生徒が1人で積み上げたものだった。

 読売新聞の取材に対し、同校の中谷清司副校長は「正直、こんなに合格するとは思わなかった。結果的に1人の生徒が多くの合格数を占めてしまい、バランスの悪い数字になったことは反省しており、今春の入試からはこうした大量出願は行っていない」と釈明。文系の学部・学科まで受験させた点については「大学受験は水物。できるだけ多く受験させることで、生徒の合格可能性を高めてやりたかった」と述べた。奨学金規定を適用する生徒は毎年度、20人程度いるが、詳細は明かせないとしている。

 大阪学芸高は1903年創設の成器商業が前身。74年に成器高校となり、96年から現在の校名になった。生徒数は約1500人。

 文部科学省児童生徒課は「生徒の希望に応じた進路指導をすべき。事実関係を確認したい」としている。

 野口克海・園田学園女子大教授(教育学)の話「生徒募集を有利にするために難関大合格者の数を増やそうという魂胆なのだろうが、生徒・保護者に対し誠実な態度とは言えない。学校の取り組みとして邪道だ」

 ■大学入試センター試験利用入試

 センター試験は1990年度から始まった大学の共通入学試験。6教科28科目あり、各大学が自由に試験教科・科目を指定して合否判定に用いる。大学独自の試験と併用する方式と、センター試験単独で合否を判定する方式があり、大阪学芸高が利用したのは後者だった。最近の私立大は、一つの学部・学科でも複数の入試方式を採用しているうえ、専攻ごとに細かく定員を定め、出願を受け付けるため大量出願が可能。例えば、関西の有力私立大の文学部では、哲学や英米文学など13の専攻ごとに学生を募集、生徒はセンター試験単独方式だけで13の合格を得ることができる。
(2007年7月20日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20070720p102.htm