中津城、所有者が売却検討…市は購入も視野に(07.08.28)

 大分県中津市の観光名所の一つとなっている中津城天守閣と周辺の土地計約2300平方メートルの売却が検討されている。市は景観、観光のシンボルとしての役割を果たしていると考えており、購入なども含めて対策を検討中。9月定例会一般質問(9月3〜5日)でも複数の議員が市の考え方を問う質問を通告しており、今後、議論が深まりそうだ。

 中津城(鉄筋5階建て)は1964年、当時の旧中津市などの要望を受け、旧藩主の奥平家が市民からの浄財も得て建設した。天守閣は同家19代目、奥平政幸氏(50)が社長の中津勧業が、土地は同氏が代表役員を務める奥平神社が所有。天守閣内には同家ゆかりの書画や武具などを展示していて、年間の入場者数は約2万人。

 市は武具など5点を文化財に指定しているほか、九州最古と言われる石垣の復元作業などを続けている。中津勧業に対しては、年間38万円を助成しているが、奥平氏は「(固定資産税などを含め)現状では天守閣を維持管理していくのは厳しい」などとして売却を検討。7月末、福岡市内の不動産会社の広告に「3億2000万円」という売却額が掲載されていたことなどから明らかになった。

 中津城の売却を巡っては今月22日、中津地方文化財協議会(中尾七平会長)など同市や福岡県吉富町上毛町の6文化団体が連名で、「市が購入すべき」という陳情書を提出している。新貝正勝市長は「昭和になって建設されたとはいえ、景観、観光スポットとして重要。議会とも十分協議し、市民の意向を反映しながら対策を検討したい」とし、奥平氏は「金額面などで折り合いがつけば、話し合いに応じる考えはある」と話している。

 中津城は、戦国大名黒田如水豊臣秀吉の命を受け、1588年に中津川河口に築城。細川家、小笠原家が入り、1717年から廃藩置県で廃城となる1871年まで奥平家が城主だった。本丸、二の丸、三の丸と八つの門、22のやぐらがあったとされる。
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