「ウワサ隠し契約」日光“幽霊ラーメン店”訴訟の行方


「ウワサ隠し契約」日光“幽霊ラーメン店”訴訟の行方 住居兼店舗の賃貸借契約を行った際、「幽霊が出る」とのウワサを説明しなかったとして、日光市内の元ラーメン店主が、建物の所有者などに502万円の損害賠償を求める訴えを宇都宮地裁に起こした。近所の住民も総じてウワサを知っており、実際、この店舗は次々と経営者が交替するなど、これまでも長続きした店はなかった。身の毛もよだつ“幽霊ラーメン店”の真相とは−。

 訴状などによると、男性は2006年2月、元料理店だった建物を賃借契約。同年4月からラーメン店の営業を開始した。その後、客や知人から「幽霊が出る」とのうわさを知らされ、男性自身も白い影を目撃したり、無人なのに足音や物音がしたり、人感センサーの照明が突然点灯することもあったとされる。

 男性側は「うわさを(男性が)知れば契約しないと認識しながら、これを秘して契約を締結した」と主張している。

 問題の建物は1999年4月、隣に住む地主男性が長男一家のために新築した3階建て住居兼店舗。宇都宮市のレストランに勤務していた長男が洋食店を開業し、客も順調に増えていたという。ところが2003年冬の雪の日、長男は近所で交通事故を起こして死亡。夫を失った妻と2人の愛娘が出て行き、空き屋となった建物に和食店が入居したころから、ウワサが出回り始めた。

 その経緯を、近所の主婦(55)は「倒産した鬼怒川温泉の板前さんが集まって和食店を始めたのですが、彼らが頻繁に“怪奇現象”に遭遇したと聞いています。夜中、調理場に人が立っていたとか、お皿が割れていたとか、包丁で何かを切る音を聞いたとか…。といっても、噂程度の話で、実際に目撃したり、板前から直接聞いた人は見たことありませんけどね」と説明する。

 客が寄りつかなくなったラーメン店は昨年7月末に廃業。建物は再び空き屋となり、入り口の看板はいつの間にか、当初の洋食店のものに戻された。

 前代未聞の裁判の行方について、不動産適正取引推進機構(東京)の担当者は「宅建業法に『嫌悪施設』(暴力団事務所など)や『心理的瑕疵』(殺人・自殺など)は、重要事項として一定の告知義務がありますが、『幽霊』は個人の価値観があるから、何とも言えません。その意味でも。今回の判例が一つの指針になるのでは」と話す。

 被告の地主と不動産業者は、元店主に「霊的な現象が建物内にあると、前の借り主から相談があり、おはらいをした」などと説明しているが、原告の元ラーメン店主側は一切の取材を拒否している。
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