農家に所得補償

「強い農家」に所得補償 競争力重視の農政新計画最終案
今後10年の農業政策の方向を検討してきた食料・農業・農村政策審議会農水相の諮問機関、会長・八木宏典東大大学院教授)は9日、食料・農業・農村基本計画の最終案をとりまとめ、島村農水相に答申した。今月下旬の閣議で正式決定する。計画案には、農家の所得を税金で補償する「直接支払い」を07年度から導入する方針が明記された。農産物の関税が引き下げられても生き残る可能性のある「強い農家」を育てるために所得を補償し、農業の国際競争力を高める道を開いた。ただ、計画では大規模農家だけではなく、小規模な兼業農家も助成対象に想定している。この秋から政府・与党で協議が本格化する助成対象の具体案づくりいかんで、補助金のばらまきとなる恐れもある。
現行の政策は、農産物の価格を税金で一定水準に保ち、生産した全農家の所得を間接的に補償する仕組み。基本計画では、「幅広い農業者を一律的に対象とする」助成策を見直し、直接支払いの導入によって助成対象を「集中化・重点化する」と明記した。
導入を決めた直接支払いは、国際市場に影響する補助金を制限しているWTO世界貿易機関)ルールには抵触しないと見られている。EU(欧州連合)や米国などではすでに導入されている制度だ。
対象となる農家は、農家自身が策定した経営計画を地元自治体が認めた「認定農業者」を中核とする。認定農業者は農業の規模拡大に意欲的な経営マインドを持った農家という位置づけだ。だが、小規模な農家が地域単位でまとまって共同で農業を営む「集落営農」も対象に含める方針を示し、農業以外で所得のある兼業農家も集落の一員として助成を受け続けることを可能にした。
農水省は助成方式の見直しのための法令改正は、来年の通常国会で成立させる方針。そのため、今秋までには助成対象となる農家の条件を明確にする必要がある。直接支払いの助成総額も今秋以降に決まる。価格支持策の代わりとして導入されるため、農産物価格は下がると予想される。
計画ではまた、増え続ける耕作放棄地の解消策として、一般企業が農地を借りて農業に参入することを認めた。しかし、審議会で産業界出身の委員が解禁を求めた企業による農地の取得は計画には盛り込まれなかった。
食料自給率目標については、15年度を達成年次としてカロリー基準は45%(現在40%)、金額ベースで76%(同70%)を目指すとした。
基本計画に盛り込まれた政策の進め方を示す「工程表」の案も取りまとめられ、今後5年間で農林水産物の輸出額を現在の約3000億円から倍増させる目標などが盛り込まれた。 (03/09 22:54)