ローマ法王「反感招き遺憾」 イスラム聖戦批判で釈明

2006年09月17日00時38分

 ローマ法王ベネディクト16世が訪問中の母国ドイツでイスラム教の聖戦(ジハード)について批判的な発言をしたとされる問題で、バチカン国務省ベルトーネ長官は16日、「法王は発言の一部がイスラム教徒の間に反感を招いたことを極めて遺憾に思っている」とする声明文を発表した。法王発言をめぐっては世界のイスラム諸国から謝罪を求める声が高まっており、異例の声明で釈明することで事態の収拾を図ったとみられる。

 しかし、エジプトのイスラム団体「ムスリム同胞団」はロイター通信に対し、法王の遺憾声明を「これでは不十分」としてあくまでも謝罪を求めており、騒ぎが沈静化するかどうかは不透明だ。

 バチカンの声明文は、問題となった発言が「法王の意図するところとまったく違った解釈をされてしまった」と説明。問題の発端となった講義で、法王が預言者ムハンマドについて述べた内容に関して「法王自身でなく、ビザンチン皇帝の言葉」で、「宗教的な動機による暴力を完全に否定するために使った」などと釈明した。

 今回の問題でバチカンが声明を出したのは2度目。法王が公の場で述べた発言について、後日声明などで釈明するのは異例だ。イタリアの教会関係者は「謝罪ではなく、改めて発言を説明することで真意をわかって欲しいと訴えると共に、誤解が国際問題まで発展するのを防ごうとしたのだろう」との見方を示した。

 マレーシアの国営通信によると、法王の遺憾声明の前には、マレーシアのアブドラ首相が「イスラム教と、キリスト教の間に不和の種をまいた」として法王に謝罪と発言の撤回を要求。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は16日、社説で「法王は深く謝罪する必要がある」と指摘した。

 AP通信によると、ヨルダン川西岸のナブルスでは同日、キリスト教の教会4カ所で、火炎瓶や爆発物が投げ込まれる騒ぎがあった。イスラム教系とみられる組織が同通信に電話で犯行声明を寄せたという。
http://www.asahi.com/international/update/0916/014.html