阪大教授の捏造を認定 学内調査、別の論文でも改ざん

2006年09月22日

 大阪大生命機能研究科(大阪府吹田市)の研究チームが米国の専門誌に投稿した論文を取り下げ、共著者として名前が挙がっていた助手(42)が今月1日に自殺した問題で、同研究科の研究公正委員会は22日、責任筆者の杉野明雄教授(62)が単独でデータの捏造(ねつぞう)、改ざんをした、などとする調査結果を発表した。委員会の調査では、同じ専門誌に投稿した別の論文にもデータ改ざんがあった。杉野教授は、一部のデータの捏造、改ざんについて認めているという。いずれも共著者に無断で投稿しており、同大は、解雇を含めた厳しい懲戒処分の検討に入る。

 問題の2本の論文は酵母菌を使ってDNA複製にかかわる酵素の働きを調べたもので、米国の生化学専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」の7月12日の電子版と同28日発行の雑誌に掲載され、第1の論文は8月2日に杉野教授名で取り下げられた。第2の論文についても取り下げの手続きが取られているという。それぞれ4人と5人の共著者がいる。第1の論文の実験は助手が中心になって進めていた。

 22日記者会見した同委員会委員長の田中亀代次教授によると、杉野教授は2本の論文について、共著者らが実施したたんぱく質の解析などをした実験の画像データを、パソコンのソフトを使って改ざんしたり、まったく実施していない実験データを付け加えたりしていた。こうした不正が少なくとも八つの実験結果について認められた。杉野教授が認めていない捏造、改ざんについても、「十分な証拠に基づき、捏造という結論に達した」と説明した。

 田中教授は「共著者たちの努力と成果を踏みにじるもので、名誉と将来を甚だしく傷つけた」と述べた。助手の自殺との関連は認められなかったというが、「積極的に調査に協力してくれた助手が亡くなったことは委員会として痛恨の極み」と話した。

 杉野教授は、DNA複製の研究では第一人者とされる。日本分子生物学会の役員なども歴任、来年3月に阪大を退職予定だったが、その後は海外で研究活動を続ける意向だったという。

 阪大では、昨年5月にも、医学系研究科のグループが発表した論文のデータ捏造が発覚。同大が捏造をしたと認定した主執筆者の学生に対する指導責任などを理由に、今年2月、共著者の教授2人をそれぞれ2週間、1カ月の停職処分にしている。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200609220087.html

こちらも参照→http://d.hatena.ne.jp/KUMA/20060906