旅行:団体旅行料理も量から質の時代 低カロリー食ホテルも

 行楽の秋。旅行の大きな楽しみの一つに食事がある。だが、最近になってシルバー世代や若い女性の旅行客の間から、「たくさんあり過ぎて、食べきれない」との声が上がり、旅館やホテルの料理が量から質へと変わってきた。従来、メニューを選べなかった団体旅行でも料理の量を選べるツアーが組まれ、低カロリーの食事を用意するホテルも登場した。【扇沢秀明】

 ◇シニアや若い女性、残すと「もったいない」「罪悪感」

 旅行会社のJTBは3年前から国内のツアーで「量ひかえめプラン」を展開しており、今秋から海外ツアーでも「お食事あんしんサービス」を始めた。JTB広報室の山崎美和さんによると、10年ほど前までは、食べきれないほどの豪勢な料理を出すのが最高のもてなしと考えられていた。しかし、最近は「食べきれずもったいない」「残すと罪悪感がある」という意見が寄せられるようになったという。「ダイエット志向が高まり、量より質を求める傾向も強まり、企画するツアーの料理のメニューも変わってきました」と話す。

 「量ひかえめプラン」のツアーで行くことができる静岡県下賀茂温泉の「ホテル河内屋」は海の幸が自慢。夕食の基本プランは11品とチョイスメニュー1品の計12品だが、量ひかえめプランは9品とチョイスメニュー1品の10品。料金は変わらないが、用意する刺し身を地魚の盛り合わせから地元で取れたタイの薄造りにし、揚げ物を蒸し物にするなど料理の質を高め、低カロリーなメニューになっている。

 また、同じプランで14品を11品に減らしたのが栃木県日光市の「花衣の館 日光千姫物語」。鉄板焼きの和牛を、より高級な前日光牛に変えた。同館は「より上質なヘルシー素材に変えました。品数は減っても、盛りつけを工夫しており、見た目の豪華さは変わりません」と話す。

 海外のツアーも変わりつつある。山崎さんは「欧米などで出されるメニューは、日本人、特にシニア世代にはボリュームがあり過ぎることがあった」と言い、JTBは昼食や夕食の前に添乗員が量の注文を取る、60代を対象にした「グランドツアー」を用意した。

 リーガロイヤルホテル大阪はカロリーに配慮したメニューを選べる宿泊プランを10月から始めた。夕食のフランス料理「スリムライン・フレンチ」は、ざるそば1杯分の360キロカロリーで、料理4品とコーヒーまたは紅茶を楽しめる。4品に使っている塩分は2・2グラムだ。

 同ホテル営業企画部は「糖尿病患者さんの要望に、ホテル料理特別顧問の技で応えたメニュー。肉を油で炒めずブイヨンで煮たり、デザートは果実エキス甘味料を使うなどで低カロリー化しました」と説明する。手間が掛かるため3日前までに予約が必要だ。

 「熟年や高齢者が今まで以上に旅行を楽しむようになり、年齢層の高い旅行者のニーズに応える必要が出てきた」と指摘するのはインターネットのバリアフリー旅行紹介サイト「優しいお宿」を運営する松本公夫社長。松本さんによると、複数のメニューを用意できる旅館はまだ少ないが、ホテルでは増えつつあるという。

 また、ペンションでは、離乳食やアレルギー対応食を用意するなど、きめ細かいサービスを提供するところも出てきているという。

毎日新聞 2006年10月11日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/news/20061011ddm013100049000c.html