論文捏造疑惑、東大が多比良教授らを懲戒解雇

2006年12月27日21時01分

 遺伝子制御にかかわるリボ核酸(RNA)の専門家、東京大学大学院工学系研究科の多比良和誠(たいら・かずなり)教授らが信頼性のない論文を発表していた問題で、東京大は27日、論文が捏造(ねつぞう)とは断定できないが、就業規則の「大学の名誉または信用を著しく傷つけた場合」に当たるとして、教授と実験を担当した川崎広明助手を懲戒解雇した。研究不正による懲戒処分は東京大では初めてという。

 昨年4月、日本RNA学会から教授らの論文について、信頼性に対する疑いが指摘され、工学系研究科の調査委員会が設けられた。

 まとまった実験記録がなかったため、調査委は4論文について再実験を要請したが、提出されたデータで捏造が発覚するなどして「論文の結果を再現したとは認められなかった」と結論づけた。

 教員懲戒委員会は、こうした報告を基に処分を検討してきた。

 多比良教授については、川崎助手の実験データをきちんとチェックせず、結果の慎重な検討もせずに論文を発表したことなどが、科学の発展を脅かす深刻な結果を招いたと判断した。

 川崎助手については、論文の結果を再現できなかったこと、試料やデータの保存義務に違反したこと、調査委に要請されたデータを捏造して提出し新たな疑いを招いたことなどが、教員の責務に著しく背くと判断した。

 また、前工学系研究科長ら5人の指導監督責任も問い、訓告とした。

 松本洋一郎・工学系研究科長は「科学の信頼を揺るがす深刻な事態を招き、痛恨の極みだ。再発防止に取り組みたい」と話した。

 多比良教授の代理人の弁護士は処分について、「実験担当者ではない教授を懲戒解雇とし、法的な責任を問うことは妥当ではない」とするコメントを発表した。法的な対応は協議して決定するとしている。
http://www.asahi.com/national/update/1227/TKY200612270288.html