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しこり残る統合 HOYAペンタックス

2007年06月01日

 老舗(しにせ)のカメラメーカー、ペンタックスと、HOYAの経営統合問題は、昨年12月から迷走を続けてきました。伝統と実績を兼ね備えているはずの二つの組織はなぜ、異常なドタバタ劇を繰り広げたのでしょうか。統合すれば、混乱から立ち直ることができるのでしょうか。

 今回の統合を巡る混乱は経営者らのお粗末な「田舎芝居」(大手メーカー首脳)で、「必要でないプロセス」(HOYAの鈴木洋・最高経営責任者〈CEO〉)だった。ペンタックスは単独で生き残れると表明したが、「経営者らの保身」と見透かされた。HOYAも買収者として、意を尽くしたか疑問を残した。

 昨年末に統合で合意したのは、ペンタックス側に単独では持続的に成長する青写真が描けない、という認識があったからだ。高収益企業のHOYAにしても、成長力を維持するには統合で医療分野などを強化したいという狙いがあった。

 統合は企業価値を上げるための当然の選択肢だった。それにもかかわらず、ペンタックス側が異議を唱えたのは「経営者の保身」(上場企業トップ)と受け止められた。

 昨年末の合併案では新会社の取締役は合計10人(うち5人は社外取締役)。HOYAが3人、ペンタックスが2人の取締役を出すことになっていた。HOYAの社内取締役は現在も3人で合併後も同じだが、取締役8人のペンタックスは大半が合併を機に退くか、執行役にならざるを得ない。合併案を詰める過程でペンタックス側の不満は募っていった。

 「単独で生き残れる」と訴えても、自らの行く末を案じる経営者らの姿が見え隠れした。

 HOYA側にも落ち度はあった。鈴木CEOがペンタックスのカメラ事業の売却を示唆する発言をしたことだ。27社の企業買収を手がけた日本電産永守重信社長は「株も保有していない時に相手の心のふるさととも言える事業に言及したのはうかつだ」と指摘する。

 企業価値は設備や技術だけでは決まらない。その経営資源を使う社員の士気のあるなしが重要だ。一人ひとりの社員の営為の総和が企業価値となる。また、企業合併・買収(M&A)の成否は、従業員など多くのステークホルダー(利害関係者)を納得させる経営者の説明能力が左右する。

 鈴木CEOは31日の会見で「しこりもあって、感情的なものも残った」と語った。ペンタックス社員の士気をどう高めるのか。今度は鈴木CEOのペンタックス社員への説明能力、経営手腕が問われてくる。

●メリット、商品に表れるか

 TOBが成立すれば、当面、カメラ、光学部品、医療機器の「ペンタックス中核3事業」は存続する。ただ、ペンタックスのカメラ事業はデジタル化の波に乗り遅れたまま。ニコンキヤノンに加え、06年にはソニー松下電器産業など電機メーカー勢がこの分野に参入し、競争は厳しさを増す一方だ。

 ペンタックスは97年、デジタル市場にいったん参入したものの、すぐに撤退。00年に再参入するといった「まわり道」が悪影響し、国内シェアは現在8%程度にとどまっている。魅力的な商品を次々に打ち出し、生き残りを図らないことには、HOYAの鈴木CEOが期待する「相乗効果」は皮算用に終わる。

 メガネレンズや眼内レンズを得意とするHOYAが、ペンタックスに最も期待するのは医療機器事業だ。鈴木CEOは「内視鏡は刺激を与えずに体の中を診断する方向に向かうと思っている。ペンタックスにはそれを可能にする技術がある」と、強い期待を表明する。

 ただ、懸念材料もある。ペンタックスからの優秀な技術者の流出が指摘されている。統合交渉の混乱の余波をいかに最小限に抑え、社内の求心力を高めるかが技術者を引き留めるカギだ。

 HOYAも懸念材料を抱える。同社の収益の柱であるハードディスク駆動装置(HDD)用ガラスディスクの売り上げに、かげりが見え始めた。

 HDDは技術の変わり目にある。大容量の垂直記憶方式にシフトしつつあるが、HOYAの対応は遅れており、「HDDと競合するフラッシュメモリーも台頭している」という指摘もある。

 さらに、HOYA側には、統合コストの重みが今後の経営にとって大きな負担になると懸念する声もある。あるHOYA関係者は「1株770円でペンタックス株の過半数を取るには500億円近く必要だが、ペンタックスの当期利益は35億円にすぎない」と指摘。「高すぎる買い物だ」と批判している。
http://www.asahi.com/business/topics/TKY200706010003.html

スパークスペンタックスへの株主提案を取り下げ

2007年05月30日19時36分

 ペンタックス筆頭株主であるスパークス・グループは30日、浦野文男・前社長らの取締役再任を求める株主提案を取り下げると正式に発表した。綿貫宜司社長ら現経営陣が6月27日の株主総会で総退陣し、後任社長を谷島信彰・執行役員とする人事案を「信頼できる役員構成」と評価した。浦野氏らも経営統合を巡る混乱の責任をとり、取締役候補の辞退を申し出たという。
http://www.asahi.com/business/update/0530/TKY200705300356.html

後任社長に谷島氏 ペンタックスTOB受諾へ

2007年05月30日08時03分

 ペンタックスの綿貫宜司社長(54)が6月27日の株主総会で退任し、後任に経営企画担当の谷島信彰・執行役員(52)が昇格する人事案が29日、固まった。筆頭株主スパークス・グループも了承しており、30日にペンタックスに株主提案取り下げを伝える方針。31日に開く臨時取締役会で、人事案とHOYAによる株式公開買い付け(TOB)受諾を正式に決める見通しだ。

 現取締役8人は総退陣する。新取締役の構成は当初、HOYAとペンタックスから各2人、社外取締役1人の予定だったが、スパークスの意向を踏まえ、社外取締役は2人にし、HOYAからの2人はTOB成立の条件付きとする。

 ペンタックスからは、谷島氏とカメラ事業を統括する鳥越興・上級執行役員の2人。社外取締役には、豊嶋秀直・元福岡高検検事長スパークスの株主提案で推薦されていたアリックス・パートナーズの西浦裕二・日本代表を迎える。監査役は3人とし、非改選の2人にスパークスの提案で推薦されていた公認会計士の中村渡氏とする。
http://www.asahi.com/business/update/0529/TKY200705290469.html

HOYAとペンタックス経営統合で合意

2007年05月31日23時17分

 HOYAとペンタックスは31日、経営統合に合意したと正式に発表した。HOYAが6月上旬から7月中旬にかけて、ペンタックスに対し株式公開買い付け(TOB)を実施して半数以上の株式を取得。株式交換などの手法も使い、早ければ11月に完全子会社化する。

 買い付け価格は1株770円。全株を買い付けた場合の金額は1050億円程度になる。

 ペンタックス筆頭株主スパークス・グループTOBの手法には賛同しているものの、価格については賛否を明確にしていない。HOYAは「価格の引き上げはしない」(幹部)考え。計画通りにTOBが成立するかどうかに注目が集まっている。

 HOYAはペンタックスのカメラ事業については、「すき間(ニッチ)市場」をおさえることで収益性を高める方針。医療機器分野については積極的な投資を行い、長期的に成長を狙う戦略だ。

    ◇

 ペンタックスは同日、綿貫宜司社長の後任に谷島信彰執行役員が昇格する人事を正式に発表した。現取締役8人は総退陣。新体制はペンタックスとHOYA側から各2人、社外取締役2人の計6人。HOYA側2人の就任は、TOB成立を条件としている。
http://www.asahi.com/business/update/0531/TKY200705310335.html

HOYAペンタックスへのTOB実施を決議

2007年05月31日12時44分

 HOYAは31日午前、取締役会を開き、ペンタックスに対する株式公開買い付け(TOB)の実施を決議した。これを受けて、ペンタックスも同日午後に臨時取締役会を開き、TOBの受け入れと6月27日の株主総会に諮る新経営体制を正式に決める見通しだ。

 HOYAは6月7日にも友好的TOBを開始する。ペンタックス株式の半数以上の取得を目指し、買い取り価格は1株770円とする。

 ペンタックス株主総会に提案する人事案は、綿貫宜司社長ら現経営陣が総退陣し、後任社長として谷島信彰・執行役員が昇格するなどの内容になる見通しだ。
http://www.asahi.com/business/update/0531/TKY200705310335.html