<厚労白書>初の老人医療無料化も村名なし 岩手の地元怒る

11月6日2時31分配信 毎日新聞

 07年版厚生労働白書の特集にある老人医療費の無料化の歴史に、全国で初めて無料化した岩手県沢内(さわうち)村の名前ではなく東京都などの名前が登場し、同村を引き継いだ西和賀町が近く舛添要一厚生労働相に訂正を求める抗議文を送ることが分かった。高橋繁町長(旧沢内村長)は「生命尊重の理念を引き継いだ首長として、断固見過ごすことはできない」と怒っている。

 白書は161ページの特集「医療構造改革の目指すもの」の冒頭で保健医療の歩みを紹介。その中で「……1969(昭和44)年に東京都と秋田県が老人医療費の無料化に踏み切ったことを契機に、各地の地方公共団体が追随し……」と、無料化の発端が東京都などのように記述されている。

 しかし沢内村では、深沢晟雄村長が60(昭和35)年に65歳以上を無料化、翌61年には60歳以上に拡大した。所得制限もなく「自分たちの命は自分たちで守る」姿勢が話題となり、当時の武見太郎日本医師会長も村を何度も視察。東京都などの無料化につながった。

 高橋町長は取材に「契機という言葉を使う以上、最初の村の名を載せないのはおかしい。営々と頑張った村の努力が否定されたようだ。誤解される表現を許すほど白書とはいいかげんなものなのか。引用もされる白書だけに訂正を求める」と語り、町議会と連名の抗議文を出す意向を示した。

 これに対し、厚労省保険局老人医療企画室は「都道府県段階の無料化を取り上げたまでで、沢内村を否定したものではない。間違いではない」との姿勢を示している。

 沢内村の老人医療費無料化は05年11月1日の合併まで続いた。現在の西和賀町では無料化対象は住民税非課税世帯の65歳以上となったが、全高齢者の自己負担額は入院で月5000円と低額に抑えている。【石川宏】
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