夕張炭鉱の貴重な資料数百点ピンチ 展示の小学校閉鎖で

2007年11月10日16時18分

 北海道夕張市立幌南(こうなん)小(森井智江校長、児童25人)の空き教室を利用した資料室には、地域住民が持ち寄った数百点の炭鉱関連資料が並ぶ。この地域で栄えた大夕張炭鉱を経営した会社が従業員の給料代わりに発行し、地域の商店で金券として使われた「山札(やまさつ)」などの貴重な資料もある。しかし、同小が市の財政破綻(はたん)で来春閉鎖されるため、資料の保存・展示場所がなくなってしまうことに関係者は頭をいためている。11日には閉校記念式典があり、卒業生らが集まる。

 同小は市内最後の炭鉱、三菱南大夕張炭鉱が閉山した1990年、二つの小学校が統合し、新たに開校した。地域の産業遺産を残したいと考えた住民や教師らが、炭鉱関係者や会社から譲り受けた資料などを次々と持ち込み、空き教室に展示していった。

 コークスの塊、大夕張炭鉱の鉱業所正面入り口のアーチ上に掲げられていた三菱の鉄製ロゴマーク、削岩機、キャップランプ、携帯用ガス検知機、坑内で使う様々な救命道具……。

 中でも貴重なのが、大夕張炭鉱が「大夕張炭山」と呼ばれていた開発初期の明治時代に発行されたと見られる山札「金一銭札」。夕張の山札が現存するのは、同市の石炭博物館に2枚と札幌市内の民間人が所有する1枚、同小にある山札を入れて計4枚しか確認されていないという。

 こうした資料の展示場所だった同小は来春に閉鎖する。その後の展示場所については、石炭博物館にも同小の統合先の小学校にも今ほどのスペースはなく、新たな展示館や展示室を作る予算もない。資料の行き先が案じられる中、来春以降は当面、無人となる校舎に保管して鍵をかけて閉鎖するしかないと市教委は考えている。

 元石炭博物館館長の青木隆夫さんは「へたに移転すると資料の散逸も心配。財政再建のためとして、何でも売ってしまう傾向のある市役所に任せるのは心配だ」と話す。
http://www.asahi.com/national/update/1110/TKY200711100196.html