府立81施設戦々恐々

 財政再建を最大の課題に掲げ、「公の施設は図書館以外、不要」と府立81施設を対象に民営化・廃止の検討を進める大阪府橋下徹知事の方針を巡り、施設側に戸惑いが広がっている。「セーフティーネット(安全網)以外は見直す」という基準が示されたのを受け、どの施設も「我々もセーフティーネットの一つ」と力説。橋下知事は6月までに「箱モノ」を中心とする25施設の存廃について結論を出す予定だが、すでに新年度の展示が中止に追い込まれるなどの影響が出ており、利用者らからは抗議の声も上がっている。
女性センター 市民存続要請

 女性の社会進出を促進するために1994年に開館した府立女性総合センター(ドーンセンター、大阪市中央区)。センターを拠点に活動する女性団体などが「好きやねんドーンセンターの会」を発足させ、15日、橋下知事あてに存続を求める要望書を出した。

 府は年間で委託料・補助金計約2億3000万円を支出し、啓発事業やカウンセリングを支援してきた。民間が費用を負担して運営するのは困難で、府庁内で記者会見した同会メンバーは「センターは、セクハラや家庭内暴力に苦しむ女性の駆け込み寺。知事の言う改革は、弱い立場の人々に影響する」と主張。今後、全国で署名運動などを展開していくという。

春季特別展中止の博物館も

 古墳〜飛鳥時代の研究拠点として94年にオープンした府立近つ飛鳥博物館(河南町)は、国内最大の銅鏡や装身具などの展示を目玉に、4月下旬から開催する予定だった春季特別展を中止した。新年度当初予算案で、開催に必要な事業費800万円の計上が見送られたためという。

 府は毎年2億円以上を投入してきたが、新年度の当初予算案に盛り込むのは4〜7月分の人件費だけ。担当者は「独立採算ではやっていけない」と漏らす。


ワッハ上方 所蔵品どうなる

 96年に「お笑い文化の継承」を掲げてオープンした府立上方演芸資料館ワッハ上方大阪市中央区)も「民営化や廃止になれば、寄贈者や遺族に所蔵品を返品しないといけないかもしれない……」と危機感を募らせる。

 収蔵品は、府民や芸能関係者から「公的施設なので」と無償で提供された演芸台本や舞台衣装など約5万7000点。府の年間負担は4億円を超えるが、伊東雄三館長(60)は「来館者からは『なくさないでほしい』と励ましの声が相次いでいる。文化施設は『心のセーフティーネット』。知事にも分かってもらえるはず」と期待をかける。
(2008年02月15日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/ho80215a.htm