必修漏れ、35都道県254校に 多くの科目で発覚

2006年10月27日03時08分

 卒業に必要な必修科目の履修漏れが全国の高校で相次いで見つかっている問題で、履修漏れは当初発覚した世界史以外にも保健、情報など多くの科目に及ぶことがわかった。大学受験優先の方針から、これらの時間を利用して数学など他の科目を教えるケースが目立っており、本来あるべきカリキュラムが曲げられている様子が浮かび上がる。実態を隠すため、県教委に虚偽の報告をしている学校もあった。

 朝日新聞の26日午後11時現在の集計では、履修漏れがある学校は35都道県の254校(うち私立が71校)に上った。

 長崎県諫早市の私立鎮西学院高では、進学クラスの3年生53人が必修科目の情報Aを履修していなかった。週2回の授業を受けることにしていたが、実際は物理や生物の授業を行っていた。同校は県に、「進学指導の強化が目的だった。早急に補習などの対策を検討する」と説明したという。

 静岡県富士宮市の県立富士宮西高では、現在の3年生が2年生の時、世界史の授業としながら地理を教え、世界史の単位を与えていた。理系の約120人が該当する。大分市の私立大分高では、美術クラスと音楽クラスの3年生と2年生について、1年生の時に履修すべき地理の授業を実習に振り替えていたという。

 こうした実態の発覚を防ぐため、隠蔽(いんぺい)とも取れる工作をやっていた学校もあった。

 東京都立八王子東高は、3年生320人のうち181人が必修の倫理を履修していなかったが、都教委に提出した教育課程届では全員に履修させると報告していた。全員に倫理の教科書を買わせ、通知表でも実際に選択した別の科目の成績を倫理の欄に記載。こうした操作は少なくとも00年度から続けられていたという。

 愛媛県今治東高では、世界史B、日本史B、地理Bのうち1科目しか授業を受けていないのに、生徒があと1科目も履修したようにしていた。履修した科目の試験を内容を変えて2回実施し、通知表ではその成績を基に履修していない科目も評価していたという。

 再発防止策の検討に乗り出した県教委もある。福岡県教委は、抜き打ちの学校訪問でカリキュラムやテストが報告通り実施されているか調べることを決めた。
http://www.asahi.com/life/update/1027/003.html