第4のひれ持つイルカ発見 退化したはずの後ろ脚?

2006年11月04日21時29分

 和歌山県太地町立くじらの博物館は4日、胸びれ、背びれ、尾びれとは別に生殖器の脇に第4のひれを持つイルカを捕獲した、と発表した。イルカのひれは通常3種類しかなく、日本鯨類研究所大隅清治顧問は「第4のひれを持つ鯨類が見つかったのは世界初」としている。クジラやイルカはかつて陸上生活をしていたとされ、第4のひれは「後ろ脚」が退化した痕跡ではないかという。見つかったのはこの1頭だけで、大隅氏は「突然変異で『先祖返り』したのではないか」と話している。
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「第4のひれ」が見つかったバンドウイルカ和歌山県太地町立くじらの博物館提供
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見つかったイルカの「第4のひれ」=和歌山県太地町立くじらの博物館提供

 このイルカは体長2.72メートルのバンドウイルカ(推定オス、同5歳)。太地いさな組合が10月28日、同町沖約12キロの熊野灘で発見し、捕獲したバンドウイルカ118頭の中から見つかった。

 「第4のひれ」は、生殖器の両脇に人間の手のひらぐらいの大きさ(長さ約15センチ)で左右に一対ある。大隅氏が観察したところ、水中でも水平のままであまり動かなかった。

 大隅氏によると、クジラやイルカは、受精後間もない時期に前後4本の脚を持つが、成長とともに前脚は胸びれになり、後ろ脚はなくなる。これまでも後ろ脚が退化した「後肢突起」と呼ばれる部位を持つクジラやイルカは数例見つかっているが、完全なひれを持つものは今回が初めてという。

 5000万〜3000万年前のクジラの祖先で、まだ脚が残っていたムカシクジラの後ろ脚部分に似ているという。大隅氏は「水生の哺乳(ほにゅう)類の進化過程を明らかに出来る可能性もある」と話す。

 同館名誉館長も務める大隅氏は「外部の研究者とも協力し、国際的な研究チームを結成したい。X線による骨格撮影やDNA分析などの研究を進める一方で、最終的には繁殖を目指したい」と話している。

 太地町は、同館で餌付けし、将来は一般公開を目指すという。
http://www.asahi.com/national/update/1104/OSK200611040060.html