談合やめ?「たたき合い」 仙台地下鉄工事で競争激化

2006年11月20日16時52分

 公共工事をめぐり、業者間の受注競争が激化してきた。2015年の開業をめざす仙台市営地下鉄東西線一般競争入札では、これまでに決まった3工区の落札率(予定価格に対する落札価格の比率)が6割にとどまる異例の事態に。中堅ゼネコンらは「次の工事獲得のための実績づくりを」と赤字覚悟で受注に走ったと見られる。業者の仁義なき「たたき合い」に、手抜き工事や下請けへのしわ寄せを懸念する声も出始めた。

地下鉄東西線路線図と今回の入札結果

 「談合がなかったことの裏返し。だが、赤字受注で業界や地域経済が良くなるのか」

 仙台市営地下鉄東西線(13.9キロ、総事業費2735億円)の工事入札について、地元建設業者からこんなつぶやきが漏れる。

 これまでに決まった3工区(計3.2キロ)の平均落札率は62%。佐藤工業戸田建設熊谷組をそれぞれ筆頭とする共同企業体(JV)が落札したが、3工区の予定価格約267億円を大幅に下回る約166億円で受注した。昨年度の仙台市発注工事の平均落札率は88.58%で、03、04年度の平均は90%を超えている。ほとんどが指名競争入札のため、一般競争入札より高い数字になる傾向はあるものの、それでも今回の低さは際立っている。

 安値落札の原因は、業界中堅の「たたき合い」だ。鹿島、大成建設大林組清水建設のゼネコン大手4社が、新潟市発注の下水道工事に絡む談合事件などで仙台市から指名停止処分を受けたため、中堅ゼネコンが受注する好機となった。

 欠陥工事防止のための「調査基準価格」を下回ったため、仙台市は適正工事が可能かどうか各JVへの聞き取り調査を実施。その結果、「問題なし」と判断した。

 受注企業は「入札価格は技術的根拠に基づいて積算した結果」(熊谷組)とするが、大手ゼネコン幹部は「今回のようなむちゃな入札はできない。参加するほど損をする戦いだ」と話す。それでも中堅ゼネコン関係者は、「巨大プロジェクトの受注実績を作れば、他の公共工事を取る際の名刺代わりになる」と必死だ。

 「この規模の公共事業では前例のない落札率」(国土交通省)の結果、財政難の仙台市は100億円以上の「節約」を実現した。ただ、欠陥工事防止のため、設計コンサルタントを工事現場に常駐させる手厚い体制をとり、施行体制などの点検も通常の2倍の頻度に増やす方針だ。

 この現象について、法政大の五十嵐敬喜教授(公共事業論)は「落札率が低すぎて手抜き工事の懸念が残る。また、金額だけでなく、技術力や地域貢献度も加味して受注企業を選ぶべきだ」と指摘する。
http://www.asahi.com/national/update/1120/TKY200611200279.html