フセイン元大統領の処刑映像「流出」で調査命令 政府高官が撮影か

1月4日8時0分配信 産経新聞

 【カイロ=村上大介イラクサダム・フセイン元大統領の死刑執行の全容を携帯電話で撮影した映像がインターネット上に流出した問題で、同国のアスカリ首相顧問は2日、マリキ首相が事実関係を調査するための委員会設置を命じたことを明らかにした。

 映像では、絞首台の上に立った元大統領に対し、立会人から「地獄に落ちろ」などの怒声が飛び、宗派抗争殺人でイスラムシーア派側の中心にいるマフディー軍を抱える強硬派指導者、ムクタダ・サドル師の名前を連呼する音声も聞かれ、急がれた処刑はシーア派による「報復」だったとの強い印象を与え、世界に波紋を広げている。

 調査では、(1)誰が映像を撮影し、インターネットに流したか(2)元大統領に罵声を浴びせたのは誰か−が焦点となるが、死刑執行に立ち会ったファルーン検事はデンマークのテレビ局などに、米兵が事前に立会人全員の携帯電話を押収したにもかかわらず、政府高官2人がカメラ付きの携帯電話を掲げて撮影していたと証言。罵声については、死刑執行室の外にいた警護官が叫んだと語った。

 同検事は高官の名前を明らかにしなかったものの、シーア派のルバイエ国家安全保障担当顧問とアスカリ首相顧問ら政府高官数人のほか、高等法廷判事、医師、スンニ派法学者、旧フセイン政権の犠牲者の遺族数人が立ち会ったとされている。

 アスカリ顧問は当初、海外のテレビ局で、映像を撮影したのは警護官ではないかとの見方を述べていたが、ファルーン検事は警護官ではないと断言した。

 死刑執行には、裁判を担当した検事の立ち会いが法的に義務づけられており、元大統領への罵声がひどくなったことから、同検事は執行を停止させるために退室する、と訴えたことも明らかにした。

 フランス通信(AFP)は3日、マリキ首相の報道官が同日、この事件に関連して警護官1人が逮捕されたことを明らかにしたと報じた。

最終更新:1月4日8時0分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070104-00000007-san-int