文科省補助金、定員割れ私大の減額拡大

2007年03月02日09時29分

 文部科学省は、私立の大学と短大、高等専門学校への補助金を大幅に見直し、07年度から実施する。定員割れしている学部の統合や廃止に取り組む大学への補助金を新設する一方、定員割れを放置する大学への補助金のカット率を、現在の最大15%から5年後に3倍程度へ引き上げる。私立大などは定員割れが半数に迫っており、「全入時代」を迎えてさらに増えるのは必至。文科省は私学助成の「アメ」と「ムチ」で現状の改善をはかる。

 私大などへの補助金は、学生や専任教員の数などで金額が決まる「一般補助」が中心で、05年度は全991校のうち879校に年間約2200億円が出ている。一般補助は、「定員確保の取り組みを促す」(文科省)狙いから、定員割れになると最大15%減額される。

 それでも、定員割れが生じている私大などは45%に達している(06年、日本私立学校振興・共済事業団調べ)。ここ数年、少子化が進む中でも、生き残りをかけて短大が4年制大学に改組したり、大学が学部や学科を増やしたりする動きが続き、思うように学生を集められない例が目立っている。大学当局が定員割れ学部を見直そうとしても、教授会が抵抗するケースも多いという。

 文科省は「定員割れは、大学側の考えが世間の求めからずれている表れ。国費を投入し続けることに国民の理解は得られない」と判断。「努力しない大学を延命させる」と批判が強かった補助金体系を一部見直し、定員割れの学部について募集停止や定員減、統合などに取り組む大学向けに「特別支援経費」(4億円)を新設して改善策を後押しする。

 定員割れに伴う補助金のカット幅も、5年かけて順次拡大していく。ただ、小規模校への影響が大きいため、「地域の中核になっている」といった各校の事情を考慮する方向だ。

 同省は、一般補助とは別に個別の項目に基づいて配分し、ほぼ一貫して増額してきた「特別補助」も見直す。

 特別補助は「社会人を受け入れる」「海外研修を行う」など項目が38にも分かれ、項目ごとに上限額があるため、大学側がむやみに多くの項目で補助金を申請し、結果として特徴が出ないきらいがある。新しい仕組みでは38の項目を3分野に大ぐくりして上限を分野ごとに改め、各大学が力を入れたい項目に特化しやすくする。文科省は「特徴が出れば定員割れの改善にもつながる」(私学助成課)と見ている。

 文科省は07年度から私立向けの一般補助を36億円減額し、国立大でも04年の法人化にともなって「運営費交付金」を毎年1%ずつ削減している。その一方、07年度予算案に、世界的な研究拠点作りを支援する「21世紀COEプログラム」を発展させた「グローバルCOEプログラム」用に158億円を計上するなど、競争的資金を増やしている。大学間の競争と、それに伴う再編・淘汰(とうた)に拍車がかかりそうだ。
http://www.asahi.com/national/update/0301/TKY200703010460.html