カワウを氷責め ドライアイスで孵化を阻止 山梨

2007年05月19日15時43分

 放流したアユなどを食い荒らすカワウの卵をドライアイスで冷やして、繁殖を抑える「手法」を山梨県水産技術センターと同工業技術センターが考案した。効果が高く、安上がりなのが売り。近く特許も出願する。

写真さおの先の手鏡(右)で位置を確認しながら、巣の上にぶら下げられたドライアイス入りの風船(左)を落とす=甲府市内で

 この手法は、細かく砕いたドライアイス約300グラムを、風船に入れ、釣りざおの先に取り付ける。別の釣りざおの先にテープでくくり付けた手鏡で、巣にある卵の場所を確認しながら、風船を真上に持っていく。風船を取り付けたさおにはモーターがあり、スイッチを入れると針がついた金具の留め具が外れ、風船が割れる仕掛けだ。

 ドライアイスをかぶった卵は零下10度前後まで下がり、孵化(ふか)できなくなるという。カワウは、巣を撤去しただけなら他の場所に移るが、この方法なら、親鳥は卵をかえそうと抱き続ける。経費は、風船とドライアイスだけで巣一つあたり100円程度で済む。

 今年3月から甲府市南部を流れる笛吹川左岸で実験をした。一帯には、約400羽のカワウがおり、約150の巣がある。うち約40個の巣にドライアイスを入れた。水産技術センターの坪井潤一研究員は「通常なら、約1カ月でヒナがかえるが、今のところ一羽もかえっていない」と話す。

 カワウによる食害は、山梨県内だけで05年度、放流したアユの3分の1程度が食べられたという試算がある。全国内水漁業協同組合連合会の推計では05年、全国の川魚の被害額は約73億円に上る。

 水産技術、工業技術の両センターは、本物の卵と偽卵を入れ替える方法など被害を減らす方策を研究してきた。今回のドライアイスを使った手法が現在のところ、最も確実で安上がりな方法だという。
http://www.asahi.com/science/update/0519/TKY200705190128.html