「博士余り」解消へ「20%ルール」!?物理学会が提言

 若手の研究者は、仕事時間の20%を自由に使って好きな研究を――。日本物理学会(坂東昌子会長)が、こんなユニークな提言を発表する。

 「20%ルール」は米企業「グーグル」などが取り入れて、社員のやる気を引き出しているが、学会が呼びかけるのは異例。背景には、博士号を取得しても、希望する研究職につけない「博士余り」の問題がある。若手博士の視野と発想力を広げ、企業など幅広い分野で活躍させるのが狙いだ。

 これまでの若手指導は、一つのテーマに集中することが良いとされる傾向があった。ただ、専門性の高さを「視野が狭い」「社会性がない」と企業側はみなし、博士の採用を敬遠。博士も企業と接点がなく、就職に積極的ではなかった。

 同学会では、若手が異分野の研究も行うことで人材としての魅力がアップすると考えた。たとえば、素粒子宇宙論の研究者が経済を研究して金融に進んだり、渋滞の仕組みを研究して交通関係に進んだりすることをイメージしている。

 坂東会長は「若手に新しいことに挑戦する時間を与え、学問の幅を広げることで就職先を増やしたい。若手を雇用、指導する側の意識改革が必要」と訴える。同学会では、他の学会などにも呼びかけ、「20%ルール」を広めていく。

 博士余りは、産業界の受け皿が少ない生物科学と、物理などの基礎科学分野で深刻。大学院の博士課程進学者は2003年度をピークに減少するなど、博士離れも生じている。
(2007年7月16日3時4分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070716i501.htm