LEC大、縮小計画難航 学生募集、出遅れ

2007年09月04日21時43分

 「授業に不備がある」と文部科学省から改善勧告を受けたLEC東京リーガルマインド大(本部・東京都千代田区)のキャンパス縮小計画が難航している。経営悪化を理由に全国14カ所のうち10カ所の廃止を決めてから半年近くが過ぎたが、各自治体の同意取り付けに時間がかかっており、あおりで来春の学生募集に出遅れた。廃止を免れた自治体も、やきもきしながら事態を見守っている。

 朝日新聞がLEC大の各キャンパスのある自治体に問い合わせたところ、千葉と神戸が最近になって「廃止」でまとまったが、札幌と静岡、広島は交渉中だ。LEC大は「全体がまとまるまで、途中経過はお話しできない」(広報担当)としている。

 LEC大が文科省から勧告を受けたのは今年1月。2月には14キャンパスのうち東京の千代田と新宿、横浜、大阪の4カ所だけ存続させ、残りは在学生が卒業した時点で廃止する計画をまとめた。各自治体は構造改革特区を設けてキャンパスを誘致したが、特区設置時の協定書などで「変更の際は協議する」としており、LEC大と個別に協議を続けてきた。

 JR札幌駅前のオフィスビルに入居するLEC大札幌キャンパスは05年4月に開校したばかりで、1〜3年生の30人余りが学ぶ。廃止方針を通告された札幌市は「学生や保護者にきちんと説明して理解を得るのが先決」(酒井裕司・市民まちづくり局企画課長)と反発する。静岡市の担当者も「在学生が最後まで学べることが担保されなければ同意できない」との姿勢だ。

 やむなく廃止に同意した自治体も、無念さを隠さない。宇都宮市は、JR宇都宮駅の駅ビルに昨年開校したばかりのキャンパスの廃止を7月末に受け入れたが、柴田賢司・政策審議室長は「東京や大阪などでの実績をもとに大丈夫と判断したのだが……。責任を感じている」と話す。

 交渉の長期化は、来春の学生募集に影響を及ぼしている。肝心のキャンパスが確定しないため、LEC大は昨年は7月上旬に始めた学生募集要項の配布を見送ってきた。8月になって、廃止同意前の各市から了解を得た上で、東京と横浜、大阪の4キャンパスだけを存続させる前提でやっと募集要項を配り始めた。

 この4月の入学者は昨年の3分の1余の139人に落ち込んだ。教員の追加配置など4億7000万円近くを費やして授業の改善に努めるなど巻き返しに懸命だが、キャンパスが存続する自治体からも「授業を改善したのなら積極的にアピールするべきだ。わかってもらう努力をしないと、一度失墜したイメージを取り戻すのは難しい」(東京都千代田区の筒井宏守観光・特命担当課長)などと厳しい声が出ている。

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 〈キーワード・LEC大問題〉LEC大は、資格試験予備校を経営する「東京リーガルマインド」が、04年4月に開校させた日本初の株式会社立大学。各自治体は、構造改革特区を設置して誘致した。質疑応答ができる教員が大半のキャンパスにおらず、勤務実態がない専任教員も多数いることが分かり、文科省は1月、大学設置基準などに違反するとして初の改善勧告をおこなった。LEC大は2月、教員の加配などを約束する改善計画を提出した。
http://www.asahi.com/national/update/0904/TKY200709040221.html